4/21(Fri)での阪神問題に関する正当 な解答(高校数学レベル)

問題:

野球チームの阪神タイガースは大変なお天気屋チームで,勝った次の試合は 8割の確率で勝つが,負けた試合の次の試合は4割しか勝てない.この調子 で試合を続けていった場合,常に2勝1敗の銀行レースを続ける読売ジャイ アンツと最終的にペナントを争うことができるか?


ようするに数列の問題なんだな.だから前かいたような直感的解答ではなくて, ちゃんと数列を書き下せば収束も示せる.

まず,開幕第1試合に勝つ確率をp1とする.これは試合が無限に 続いた場合の平均勝率の極限が存在するかしないかにかかわらず任意に設定できる ことに注意しよう.ここで,第N試合目に勝つ確率をpNとしたとき, 続く第N+1試合目に勝つ確率pN+1

pN+1 = 0.8pN+0.4(1-pN) = 0.4(1+pN)

と書けることはいいね.この式は漸化式だから解くことを考えよう.整理すれば

pN+1 - 0.4pN = 0.4

である.Nを1減らしても同じことがいえるから,

pN - 0.4pN-1 = 0.4

だね.ちょいとトリッキーだが辺々引き算すると

pN+1-pN = 0.4(pN-pN-1)

となる.よくあるテクニックですな.ここでpN+1-pN をqNとおきなおすと,

qN = 0.4qN-1

となって,これは公比0.4の等比数列だ.したがって

qN = q10.4N-1

である.ただしq1=p2-p1である.
ここでまたトリッキ―なテクニックをつかうと,

pN = pN-pN-1+pN-1-pN-2+pN-2.........-p1+p1
= (pN-pN-1)+(pN-1-pN-2)+...... (p2-p1)+p1
= qN-1+qN-2......+q1+p1

となる.前半のqの部分は初項q1,公比0.4の等比級数だから,結局

pN = q1(1-0.4N-1)/(1-0.4)+p1

となるんだな. ここでq1=p2-p1, とp2=0.4(1+p1)を思い出せば,

pN = (0.4(1+p1)-p1)(1-0.4N-1)/0.6 + p1
= (0.4-0.6p1)(1-0.4N-1)/0.6 + p1
= 0.4/0.6 - p1 - (0.4/0.6-0.6/0.6p1)0.4N-1 + p1
= 2/3 - (2/3 -p1)0.4N-1

ここでN->∞の極限を考えるとpNは確かにpに収束して

p = 2/3 = 0.666666.....

となることがわかる.このpがは阪神がある試合に勝つ平均確率で, 開幕戦に勝つ確率p1にはまったく関係なくきまっていることがわかる.

ただしよくよく考えると,このpは「ある1試合に勝つ確率」であって, それまで の勝敗結果から計算される「勝率」ではない! 後に示すように,無限に試合を していけばpはいわゆる「勝率」に一致するのだが,ここでは 乗り掛かった舟なので,きちんと勝率を計算してみよう.

N試合消化した段階での平均勝ち数をsNとしよう.
開幕戦に勝つ確率はp1だから,開幕戦終了時の平均勝ち数 s1

s1 = p1×1+(1-p1)×0 = p1

である.同様にN試合消化時の平均勝ち数sN

sN = sN-1 + pN×1+(1-pN)×0
= sN-1 + pN

となる.pNは「それまでの経過に関係なく,N試合目に勝つ確率」だった ことを思い出そう.

上式は漸化式だから解くことを考える.

sN - sN-1 = pN

sN - s1 = pN+pN-1+....p2
ゆえに sN = pN+pN-1+....p2+ s1
= pN+pN-1+....p2+ p1

なのだ.pN = 2/3 - (2/3 -p1)0.4N-1という 関係はさっき求めたから,これを代入してやると,ややこしいので途中経過を 省略しますが,

sN = 2N/3 - (2/3 - p1)(1-0.4N)/0.6

となるのです.
N試合消化時点での勝率zNはそれまでの勝ち数sNを 試合数Nでわったものだから,

zN = 2/3 - (2/3 - p1)(1-0.4N)/0.6N

となり,開幕戦に勝つ確率p1次第で変化することがわかります. また試合数N->∞の極限ではz=2/3=0.66666....でp に等しくなることがわかります.これは巨人の予想勝率と同じですから, 無限に試合が続けば巨人と互角の勝負 ということになります.

しかし現実には試合数は135試合ですから,N=135を代入してみましょう. すると,

p1 = 0 の場合(開幕戦負け),z135 = .658436....
p1 = 1 の場合(開幕戦勝ち),z135 = .670781....
p1 = 0.5 の場合(開幕戦の勝敗五分五分),z135 = .664609....

となってしまうのです!.つまり阪神は開幕戦に勝てば,135試合目において巨人を 「平均的に」上回ります.しかし開幕戦に負ければ下回ります.まだ開幕前で勝つか 負けるか五分五分の時点ではタッチの差で及ばないのです! わずか2厘差!!

もしp1=p=2/3,つまり平均勝ち確率と同じ割合で開幕戦 を勝つとすれば,z135=2/3(任意のNでzN=2/3つまり何試合 であろうが期待勝率は2/3ということ)となるので,何の問題もないのですが, baysian(どうなるかわかんないってことは五分五分の確率と考える立場)としては イマイチゆるせないところ. この議論は平均的にはそうなるということなので,実際の勝ち負けの分布次第で 終盤に連勝の目が出れば十分勝負できるという結論は間違いないようですね. 勝率0.66666ということは135試合で90勝ちょうどということですから,もし91勝 すれば勝率は.674074....となり 7厘4毛以上勝率が前後します.したがって 期待値での2厘差はないのと同じです

ここまで読んできてくださった方,どうもありがとうございました. 戻る